外套・鼻

10月 10th, 2005 § 0 comments § permalink

外套はその主人公が役人であるという点に注目して読みたい。いや、むしろ、肩入れしたい。役人も、役人じゃない人も、役人的でさえあれば、その資格はある。

小役人アカーキエウィッチは、外套を新調するという戦いに無謀にも挑みかかり、大方の予想どおり、散る。

こよなく幸福な気分で家へ帰ると、彼は外套を脱いで、もう一度ほれぼれとラシャや裏地に見惚れてから、ていねいにそれを壁にかけたが、今度はそれと比べてみるつもりで、もうすっかりぼろぼろになっている、以前の《半纏》をわざわざ引っぱり出した。それを一目ながめて彼は思わず笑き出してしまったー何という似ても似つかぬ相違だろう! それからもずっと長いこと、食事をしたためながらも、例の《半纏》のみじめな現在の身の上を心に思い浮かべては、絶えずくすくす笑っていた。

これが小役人アカーキエウィッチの絶頂期である。この後の惨状を知るものは、涙なしに読むことはできないだろう。そこから五ページと進まないうちに彼は不幸のどん底に落ちる(落とされるのではなく、落ちる)ことになるわけだが、実は引用部の次の行には自らその第一歩を踏み出している。合掌。

鼻はミステリ。失踪事件。焼き立てのパンの中から発見されるが、そのパンに葱をぬって食べたいというロシア人も謎。永遠の謎。

Where Am I?

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