弧客(ミザントロープ)

9月 30th, 2006 § 0 comments § permalink

きゃあ!月末!たすけて〜モリエ〜ル!って激しく既視感を憶えます。 それとも、なんらかの、空前の、モリエールブーム? すなわちモリブーム? 投稿日時をちょっとばかしインチキしたことについては涼しい顔でスルー。

いや、まぁ、そんなことはおいといて。今回は『弧客』でございます。正直、「店主が読まなくてよかった」と思いました。なにこの主人公。店主だったらぶった切りですね。まっぷたつでしょう。私は銀河よりも広大な心で許容しますが。

主人公アルセストは生真面目というか融通が利かないというか、人に対して思ってもみないことをいったり、阿諛追従するのが我慢ならないのです。ある詩の作者に意見を乞われてぼろかすに酷評し、訴訟沙汰になったりします(まぁこの場合はどっちもどっちですが)。こんな種類の対人潔癖症は、若さにはありがちなことととも言えます。

そんな彼の弱点は恋人(現代の感覚では「恋人」とは呼べないような気がしますが、それはさておき)。その恋人セリメエヌはアルセストの友人フィラントの言によれば、「コケットで口さがなく」「現代の悪癖がしみ込んでいる」「変な女」。無闇に愛嬌をふりまいて男性を翻弄するタイプの女性です。アルセストからすれば不真面目で不誠実で、本来最も嫌いなタイプの人間なわけですが、でもなぜか惚れてしまう、これも若さにはありがちなことですね。

そのことについてはアルセストも自覚的です。友人の突っ込みに彼は答えます。「僕がいかにあの若い未亡人を愛しているにしろ、目にあまる欠点がみえないわけではない。…僕があの欠点を認めても、咎めたてても、残念ながらあの女は男に好かれる女なのだ」。そして若さゆえの気負いでもってこう宣言するのです。「僕は誓って、強い情熱であの女の時代病を洗い清めてやるつもりだ」。

よけいなお世話だなぁと思いつつも、これだけならまぁそれはそれでがんばりやと言えなくもない。だけど、ちょっとあやしい手紙が一通出てきたくらいで、宣うのが次の科白ですよ。あえて引用タグで囲んでみますよ。

僕の望みを容れて不実な女に代わって望みをかなえて頂きたいのです。それでこそ仇も討てるのです。僕はあの女を罰したい一念で、貴女を心から想い、深い愛を傾けて、敬いかしずき、悦んで夫たる務めも果たし、誠心誠意で仕えます。これこそ僕の捧げる熱烈な犠牲なのです。

これをセリメエヌの従妹エリアントに向けて発するのです。エリアントは真面目なアルセストのことを憎からず思っていて、アルセストはそれを利用しようとするわけです。ただ、エリアントはきわめて冷静で、「復讐したいお気持ちもやがてなくなってしまいましょう」と受け流します。エリアントにはもう少しまともな男性と結ばれてほしいものです。

若いってことはただそれだけで病気なのです。ふつうならアルセストは極刑だと思うんですけど、精神鑑定で無罪になってしまいそうです。あるいは少年法が適用されて。言うなれば青年14歳。

さて、この「弧客」という聞きなれないことば。訳者によれば、「厭世家」とか「正義派」とか「寂しき人」とかいろいろ考えたがしっくり来ず結局「弧客」に落ち着いた、とのこと。「弧」はともかく「客」はどうしても「ゲスト」のニュアンスが含まれて違和感があるのですが、広辞苑で調べてみますと「ひとり旅の人」ということでやはりちょっと違うようにも思われます。含みがあるにせよ、含ませすぎではないかと。訳者が「親しめなかった」としてあえて避けた直訳の「人間嫌い」でよかったんじゃないのかな。七字の法則にも合致しますしね。

あるいは

9月 30th, 2006 § 0 comments § permalink

こういうものがまだまだ眠っているから、人類を愛す。ボンテンペルリを読んだ時にも思った。イタリアの児童文学者だそうで、初めてかと思ったら、『チポリーノの冒険』を読んだことがある。いや、読んだことがあるというよりも幼年期に愛読していた。再会なわけだ。

「チヴィタヴェッキアの郵便配達人」。タイムトリッパーもの。ピラミッドを二時間で建てる出鱈目な話なのだが、細かい部分が妙におかしい。

「どうだい、考えてくれたかい?」
「ええ、十九時三十分から十一時四十五分まで考えました。」

「ですが、ぼくは何もせずに時間を無駄にすることに慣れていないのです。この船は、ちっともエジプトに着く気配がないように思えます」
ところがどっこい、船はきちんとエジプトに着いた。

そのうち《コオロギ》は、エジプトのピラミッドの建設を手伝わされるために運ばれているという予感がした。案の定、到着した砂漠には、建設中のピラミッドがあった。

「ピアノ・ビルと消えたかかし」。ピアノを弾きながら平原をさすらうカウボーイ。どういう状況か想像してみてほしい。

白い馬にまたがって前をゆくのが、ビル。黒い馬にまたがって後ろをゆくのが、ピアノ。ビルとピアノ。ピアノとビル。そう、ピアノ・ビルだ。

言うに事欠いて「そう、ピアノ・ビルだ」か。

「ヴィーナスグリーンの瞳のミス・スペースユニバース」は、端的にいうと「シンデレラ」で、不遇の主人公、途中の展開から結末に至るまで、シンデレラそのものなのであるが、全然違う。シンデレラと全然違う。どこが違うのか判然としないにもかかわらず、もう何から何まで見事に違うのである。このあたりの「容赦なさ」が、ボンテンペルリを彷彿とさせるのかもしれない、イタリア人。

今後も「光文社古典新訳文庫」には期待ですね。本作のように、「なぜか翻訳されてない名著」をどしどし発掘してほしいです。その「なぜか」を想像してみるのもおもしろいですしね。

アップルパイ

9月 23rd, 2006 § 4 comments § permalink

アップルパイというとアメリカンな感じがするものですが、本日のアップルパイは岩手産のリンゴ(さんさ、きおう)にニュージーランド製のパイ生地(フレンチスタイル144)です。200度ぐらいで20分ぐらいバーニングです(すまん…)。

で、できあがりはこんな感じ。

060923.jpg

お好み焼き風ですが、アップルパイでしたよ! あつあつ美味!

ニセどうぶつビスケットとバニラアイス

9月 18th, 2006 § 0 comments § permalink

「どうぶつ」も「ビスケット」も一般名詞である以上どちらが本物であるかという問いは意味を成さないわけですが、ただ、「どうぶつ」の「ビスケット」というものに対する情熱やら心意気に関しては、ギンビスに軍配が上がるように思われます。

どうぶつビスケット(生協)

(→参考:たべっ子どうぶつとバニラアイス)

似てるとか似てないとかも無意味です。そもそもビスケットはビスケットであり、それ以上のことは知られていません。

尾を喰らう蛇に期待

9月 7th, 2006 § 0 comments § permalink

今月は講談社が熱いですね。むしろ暑いのかも知れません。残暑です。以下、講談社ミステリーの館9月号より。

まずは森博嗣『λに歯がない』。Qシリーズですね。歯がないんだそうです。大変なことです。

で、お次は京極夏彦『邪魅の雫』。京極堂シリーズですね。前作がアレだっただけに本作はお願いしたいところです。アレとは?

とどめは竹本健治『ウロボロスの純正音律』。ウロボロス三部作完結編、なんと制作期間8年だそうですよ。『黒死館』へのオマージュというあたりに不安を覚えます。

あまつさえ島田荘司サイン会ですよ。京都島田ファンは今週土曜日ジュンク堂に集結ですよ。

実は島田荘司あんまり読んだことないです。『異邦の騎士』(号泣)、『占星術殺人事件』(驚愕)、『斜め屋敷の犯罪』(欠陥住宅)、『奇想、天を動かす』(天動説)、んーこれくらいかな? 『異邦の騎士』は泣きますね。全員泣きます。泣かない人は半泣きでしょう。

おっとこれじゃあ「読んだ」じゃないか。あくまでも「読んでない」ですゆえに、このへんで。

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