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寺田寅彦著『柿の種』

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類い稀なる物理学者による冴え渡る予言の数々。その先見性には目を見張るものがある。

映画の入場料を五十銭均一にしたら入場者が急増したという話を聞いて、筆者はこれが五十銭ではなく四十七銭均一で、いちいち三銭の釣りをもらうのであったら、こんなにも流行らないだろうと予想する。そして、その打開策として。

偶然友人の経済学者に会ったので、五十銭銀貨の代わりに四十七銭銀貨を作って流通させたら日本の国の経済にどういう変化が起こるかという愚問を発してみた。これに対する経済学者の詳細な説明を聞いた時は一応わかったような気がしたが、それっきりきれいに忘れてしまった。

筆者は「忘れてしまった」と書いているが、自ら「愚問」としていることから、このような試みは何の意味もないことを悟ったであろうことが読み取れる。中途半端な額面の貨幣を作っても誰も使わないし景気は好転しないと。ああ、似たような話が最近どこかの国でありましたね。

次は短いので章全体を引用してみる。

新しい帽子を買ってうれしがっている人があるかと思うと、また一方では、古いよごれた帽子をかぶってうれしがっている人がある。

筆者は「また一方では」と書いたが、真意はそうではない。彼は将来、両方をうれしがる人が現れることを知っている。そしてその答えはジーンズショップにあるだろう。

最後に引っかかるのは書名、すなわち「柿の種」である。私にはこれが何かを訴えているような気がしてならないのだがどうか。明後日あたりに何かが起こるような気がしてならないのだがどうか。

Posted at 2005. 8.22|コメント(0)


寺田寅彦著『柿の種』
 寺田寅彦著
 柿の種
 岩波文庫

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