人の恋路の邪魔をする
鯖書房 » 読書部 » 外国の小説 » トンマーゾ・ランドルフィ,月ノ石,河出書房新社
まず分からないのは、ジョヴァンカルロがグルーに恋をするということだ。グルーの登場はあまりにも唐突である。
大学生ジョヴァンカルロは叔父一家宅を訪れ歓迎される。夕食を伴にしながら盛り上がるのはジョヴァンカルロの雇っている下女の悪口だ。叔父叔母従姉妹たちの執拗なまでの非難や罵詈は常軌を逸し、この時点で読者は奇妙な匂いを嗅ぎ取るわけだが、そこに現れるのがグルーである。
グルーに対する叔父一家の反応もおかしい。突然現れた赤の他人にびっくりするわけでもなく「一同はうれしそうな声をあげた」。なぜ来たのかも分からないし、彼女の足は山羊の足である。スカートからのぞくのは山羊のひづめなのである。まったく意味が分からない。しかも彼女は言う。ジョヴァンカルロをひじで指し、言う。「彼と一緒に出かけるために来たの」。
ジョヴァンカルロは怒り(意味が分からないものに対する反応として、怒りは妥当であろう)、動転し、口に出してしまう。「彼女は山羊の足をしているよ」。
しかし、一家が注目するのはグルーの足ではなく、発言者ジョヴァンカルロの方である。まるで狂人を見るように。叔父「は、は、きれいなあんよだねえ……」。
成り行き、ジョヴァンカルロはグルーを送ることになる。饒舌な彼女に戸惑う彼。この道行きは一体何なのか。ジョヴァンカルロは何に巻き込まれているのか。恋の始まりなのか。
断言できる。第一章とエピローグだけを読んで、途中の展開を予想するのは絶対に不可能。エピローグは、ふつうだ。あまりにもふつうの場景だ。二人の恋を邪魔したものは何か。第一章の不可能が、不可能として決着するのは何か。山羊なんだろうなぁやっぱり。めぇ。
Posted at 2004. 6.15|コメント(0)