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日本幽囚記 (下)

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上中巻は記録中心でしたが、下巻は日本という国についてのまとめです。

日本が近隣の国を見下し始めたのは明治以降だろうとなぜか思い込んでいましたが、どうも江戸時代すでにそうであったらしいと初めて知らされました。
キリシタン迫害の事情も、中学の教科書では、具体的にこんな無体がありました(踏み絵とか)という紹介ぐらいで、そういえばそこに至った経緯はこれまで読んだこと無かったなぁと。

日本幽囚記 (中)

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ムール君(上巻で日本側に寝返った士官)を際立たせる構成で、他は背景扱いに見えてくるほどですが、個人的に目が止まるのはそれでも背景の方でした。
逃亡して異国の山中を彷徨う章は、本書を端折ったものが少年向けに出版されたというのも頷ける面白さです。

(p. 107 著者による注釈) ※日本の役人たちは署名するとなると極めて慎重細心である。日本の公文書は必ず日本人のいはゆる高尚な言葉で書くばかりでなく、それも一定の法式を守って書くことになっている。……「ロシヤの官庁ではこんな間違ひは重大視しないのです」と答へたが、日本側では……「日本でもそれあの者共なら」と雑役夫を指して、「手紙の中でそんな間違ひをするかも知れません。しかし書き方の間違った手紙に署名するものは、日本の役人には一人もありません。といふ訳はこんな書類は百年後にも他人に見られ、その文体によって署名者の人柄を判断されるからです」
この双方の意見のうちどちらが正しいか、又日本人は未開人といふ名にふさはしいかどうかも、読者の判断にまかせよう。

移動手段が馬と籠だとか、ガラスでなく金属の鏡を使っているだとか、道具についてはたしかに時代がかっているのですが、このあたりは200年前だと既に見られた傾向なのですね。
中巻も、えらい変化があったりなかったり、興味深い観察記録が溢れます。

それにしても食材として大根の頻度が高い。

日本幽囚記 (上)

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ゴローニン事件どころか『菜の花の沖』の粗筋すら知らないでタイトル借りしました。
まさか北方領土の復習をすることになるとは。
4つの島名を暗誦することが辛うじてまだ出来るだけで、一番大きいのはどれかすらまったく憶えていませんでした。

(p. 170)  食餌は一日三回、朝の出発前と、正午と、夕方夜営地についてからである。食べ物は朝、昼、晩とも大した差はなく、普通の御馳走は、パン代りの米飯、塩の代りが塩漬の大根二片、大根の吸物、(時には何か知ら野草の吸物)又は素麵、それに焼魚か煮魚一片である。たまにはスープに茸が入っていることもあり、固くうでた卵を一つづつ附けたことも二度ほどあった。
しかし定量というものはなく、誰でも好きなだけ食べていた。普通の飲物は、砂糖を入れない下等な茶で、たまには酒を出した。護送兵たちもわれわれと全く同じ物を食っていた。どうやら官費の賄ひらしく、宿泊の都度、年長の護送隊員が主人に全員の飲食費を払っていた。

上巻はじめで著者ら(ロシア人の一団)は早々に捕まってしまい、島の地理についての話は中断してしまうのですが、この頃(19世紀初頭)の日本に疎い身には細かい描写も面白く読めました。
とくに食事内容については、境遇の変化にともなって様子も変わり、そのつどいちいち記述されます。

(p. 182) 日本では人を拘束する時には、(事の正邪がまだ判明しない前でも)、高官の者でも必ず縄をかける、ということを耳にした。

すでに今現在と同じような気配があるなぁと思わせる下りもいくつか。

脱獄準備にあたり方位磁針を自作するやら日本側に寝返る者が出るやら、冒険活劇っぽくなってきたところで中巻へ続きます。