期待されることは必ず起こる

Posted on 水曜日, 4月 8th, 2009 at 11:57 PM

ナイフ投げ師ときいただけで、これはもう、刺さるしかないのである。

ナイフ投げ師ヘンシュが私たちの町に立ちよって土曜の晩八時にただ一度だけ公演を行うと聞いたとき、私たちはどまどい、自分の気持ちもうまくつかめなかった。

嘘である。ナイフは刺さるのである。それ以外はありえない。欲望ですらない。事実が、ただ眼前に提示されているのである。その唯一の期待にミウハウザーはいかに応えるか。ナイフ投げる、刺さる、ミルハウザー。これに優る快楽が短編小説に見つかるか?

同様に、気球飛行ときいただけで、飛び降りたくなる。パラダイス・パークときいただけで地獄である。夜の姉妹団ときいただけで、いかがわしい秘密に塗れた少女たちの儀式でしかないのである。

夢ではない、偽ではない虚でもない。魔術という名の現実に、圧倒的な迫力に、ただただ飲み込まれるばかりなのである。

追記的に書いておくと、「ある訪問」はどうしようもなく遣る瀬無いよ。こういう類いの幻滅というかおぞましさというかある種の愛情は年を取れば取るほど薄まってはいくもののなくなることはない。たぶん。時々思い出す。で、「なんでそうなるのかな」と口に出してみたくなる。

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