探偵再登場

鯖書房 » 読書部 » ミステリ »  森博嗣『Φは壊れたね』

新シリーズである。新シリーズであるが旧シリーズ(SMシリーズ)の数年後という設定である。古いキャラクタも登場するが、中心となるのは新キャラクタである。

マンションの一室で密室殺人が起こる。被害者は両手を天井から吊られ、ナイフで刺されて死んでいる。死体発見の状況を映し出したビデオが現場には残されている。そのタイトルが『φは壊れたね』。

まぁそれはいい。むしろそれはいい。本作で問題となるのは探偵役の海月及介である。

海月及介というのは本名だろうか。実は違う。彼の本名は森川及介である。もういいか。言わんでいいか。彼の父は前シリーズ(Vシリーズ)で準レギュラーとして登場していた森川素直なのである。理由はいいか。言わんでいいか。

森川はどちらかというと事件には直接絡まず、事件の周縁で主人公たちと戯れ、寡黙ではあるが的を射ることばを連発していた。その彼が事件にかかわってくると海月及介である。前シリーズでは瀬在丸がズバズバ解決してしまったのであまり出番はなかったが、実は彼もすべての謎を解いていた。解き切っていた。その遺伝子は海月に受け継がれ、本作に至っている。

もしかすると海月は森川の息子ではなく、森川本人かも知れない。それくらいのトリックはありえる。海月大学入学前3年間の空白というのがあやしい。狂言回しである大学院生山吹早月の中学時代の同級生ということになっているが、実はここで、この3年間で、入れ替わりトリックが発動している。森川と海月が入れ替わっている。本物の海月は「海外」のどこかに埋められているのかも知れない。

いや、そもそも大学生や大学院生が10代後半から20代であるという先入見を捨てねばならない。山吹は40代かも知れない。山吹の3歳年下で海月と同級生の加部谷恵美も40代。西之園萌絵は40代後半、犀川は50代である。山吹の担当教官である国枝桃子については「30代」という記述があるのでそうなのだろう。いやぁなかなかどうして。人は見かけによらないものである。

というわけで新シリーズはQシリーズではなく、MMシリーズである。もちろん Morikawa Motonaoの頭文字である。

ちなみに本作における引用はヴィトゲンシュタインである。「語りえぬものには沈黙せねばならない」。はい、すみません。

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コメント / トラックバック 2 件

  1. way より:

    無茶苦茶な考察です

  2. kay より:

    有り難うございます

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