犯人はオレだ!

Posted on 火曜日, 10月 24th, 2006 at 1:30 AM

倒叙ものを読むとどうにも気分が沈みます。犯人の身勝手な独白に嫌気がさし、それでいて真相が発覚しそうになるとハラハラする。どう転んでも嬉しくないのです。犯人、探偵、誰に肩入れして読めばいいのかわからない。さて。

倒叙ものというのは、最初から犯人がわかっているミステリです。犯人が分かっていて一体何がおもしろいのか。

本書においてはまず被害者が亡くなるシーンから始まります。そして、視点が犯人にスイッチし、犯行に至る動機、準備、実行、後始末が描かれます。

犯人はどこでしくじったのか?警察はどうやって追いつめるのか?犯人の心理状態は?駆け引きは?特別な視点を導入することにより、通常のミステリでは描写しきれないものを描写する、それが倒叙ものの醍醐味です。そしてそれが倒叙もののすべてだと、私は思っていたのです。

ここからは完全にネタバレです。いつものネタバレよりもさらに容赦なく最上級のネタバレです。これから本書を読もうと思っている方は言わずもがな、読んでないけどこれからも読む予定はない、という方もこのエントリの続きは読まないでください。本書を読んだことがある方だけ先にお進みください。

冤罪か!お前犯人ちゃうんか!

倒叙ものの古典っていってたやん。最初から犯人出てくるやん。自分がやったんだよーんって。人物紹介にも書いてあるやん。

「チャールズ・ワインバーン…犯人」

こいつが犯人だってふつうに思うわな。何の疑いもなく思うわな。思う以前に思い込むわな。最後の最後、フレンチ警部がひっくり返すでしょう? こたつの裏の麻雀卓みたいに、簡単にひっくり返すでしょう? 私もひっくり返りましたよ。椅子から転げ落ちましたよ。

ということは、冒頭の事件発生シーンと警部による解決編(?)を除いた大部分、犯人の語りだと思っていた部分はすべて警察による騙りだったわけですね。端的にいえばでっち上げだったわけですね。怖いなぁ。フィクションとはいえ恐ろしい。

妙だとは思ったのだ。状況証拠は確かに犯人を名指している。でも、物的な証拠がない。まったくない。こんなんで有罪なんてありえるのかな。陪審制ならありえるのかな。

物的な証拠なんて出るはずないのです。犯人じゃないから。

警察による騙りって書いたけど、つまりは筆者による騙りってことで、古典は古典にしてすでに脱ジャンル的なわけですね。ほんとうにびっくりした。

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