Archive for the ミステリ Category

海月VS赤柳

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恒例と言いますか、Gシリーズ森新作レビュー。今回のGはεでございますよ。イプシロン、でございますよ、念のため。自分への覚書として。

さて本編ですが、三行で言うと、

バスジャック

爆弾

同人誌

でございますね。

ジャックドバスに乗り合わせてしまった山吹と加部谷は置いといて、今回の読みどころはずばり「海月VS赤柳、直接対決」でございます。

バス車中の山吹から連絡手段のない海月への伝言を依頼された赤柳が、海月のいる山吹のアパートを訪れます。そこでの海月と赤柳の対話。山吹から依頼された用事というのは実は隠れみので、赤柳はある任務を帯びています。それは海月の正体を探るというものです(ネタバレ)。

「僕は、別に人を支配したいとは思わない。誰もが自由でいられる方が良いと考えている」
「そうであれば、誰が何をしようと、放置しておけば良いことでは?」
「いや、何をしているのか、知りたいだけだよ」
「知るという行為は、情報を自分のものにする。それは明らかに、ある種の支配です」

海月=森川からの鋭い牽制球! 俺の身辺をかぎ回るな、ということでしょう。残念ながら、今回はここまでですね。次回に期待っちゅうことで。

すみません。自分でも何書いてるのかわからなくなってきました。

基本中の基本

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この種のミステリにおける基本書なのでしょうか。読み終えて驚いたのは、似たようなものをいくつも知っているということです。私が知る限りは本書がいちばん古く、30年以上も前に書かれています。

坂井正夫という推理作家が都内のアパートで服毒死します。現場の状況から警察は自殺と断定、納得いかない探偵役が独自に調査する、という筋書きです。坂井正夫は冒頭で退場しますが、彼をめぐる人間模様が事件解明の鍵となります。自殺なのか、はたまた他殺なのか。私は見事にはずしました。私はその二択すらも、当てることができなかったのです。作者の術中に嵌まったということです。

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完全犯罪は難しい

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「このミス2006」の第2位。1位の東野圭吾はこのミスだけじゃなくて文春もだしあまつさえ直木賞であまりにガチガチなのでスルーします。読んでませんがたぶん「おもしろかった」ぐらいしか感想書けないのでしょうし、何ていうかふつうに好きです。ふつうに好きというのは宮部みゆきとか京極夏彦みたいに、みんなが好きだし自分も好き、という意味です。

さて、本書。このミス2位にもかかわらず、アマゾンレビューでは不評です。しかしこのクリックを躊躇わせる不安にこそ、期待せずにはいられない。

タイトルからも推測されるように密室ものです。密室ものですが、密室トリック自体はたいしたものではありません。どちらかというと犯人VS探偵の対決、いわゆる刑事コロンボです。コロンボと違うのは探偵役がおっちゃんではなくて20代の女性で、なおかつ犯人と旧知の仲という点でしょう。このあたりは若干ではありますがオチにも影響してきます。コロンボでは必ずコロンボが勝ちますが、これはどうでしょうか。あと、映像的。というかテレビドラマ的。そしてネタバレ注意。

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ミステリーなのかミステリィなのかはっきりしろと

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知らん間に新作が出ていたのでサクッと読んで、カクッとレビュー!以下完全ネタバレ、茫然読者、アタタカイトコロヘイキタイナリ〜。

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タッパーよりも

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古典中の古典であるということは知っているつもりです。それでもなお称賛に称賛を重ねてしまうのは密室というものの本質をズバズバついているからです。

そうなんです。隙間が空いてたら密室じゃないんです。

人間や猿蛇は言うに及ばず、アリンコミジンコも当然として、空気中の微生物、いや、空気そのものの出入りをも拒否する気密性、それを要求されるのが密室なのです。そして、見事応えたのが黄色い部屋である、と。

黄色い部屋以上の密室なんて、もう作られないでしょう。作るんなら、巨大缶詰めとかタッパーとかになるでしょう。いや、族議員ならやるかも知れん。むしろそういう方向性かも知れん。

以下ネタバレです。

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最速(当社比)レビュー森新作(θは遊んでくれたよ)

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Gシリーズとは何事だ。何の祭りだ。新シリーズはMではなかったのか。100歩譲ってQシリーズだろう。Gなんてどこに出てくるというのか。まさかナベツネではあるまいな。

まぁそれは置いといて。

海月及介が森川素直の息子(または森川本人)であることは、前回のφエントリで実証済みであるが、今回は実証も何も、そのままの解答が載っていた。39ページを見てくださいね。

入口の外に立っていた海月及介が店の中に入ってきた。…(中略)…、彼は…(中略)…素直である。

出た。作者の開き直りとも取れるこの記述。シリーズ2作目にして大ネタをばらしてしまってもいいものか。ずばり的の中心を射貫いてしまった己の洞察の鋭さを呪う。まったく罪深いことだ。結局息子ではなく本人だったということで入れ替わりトリックの解明が今後の興味の中心となるであろう。

肝心の本編であるが、ミッシングリンクものである(本文中にもそのような記述がある。実に深い考察である)。飛び降り男性の額に「θ」、半月後には手のひらに「θ」の女性死体。さらには足の裏に「θ」といった具合で、その後も続々と「θ」事件が発生して、さぁ関連は?自殺?他殺?シリアルキラ?というわけである。詳しくは読んでほしい(何だそりゃ)。

さて、本編が片づいたところで再度Gに関する検証である。誰かの頭文字であることは間違いないとしてさぁ誰かというので、登場人物一覧を見ていて、ピキーン!ヒラメイタ!

郡司嘉治……N大学医学部教授

こ、これだ!GUNJIシリーズ!手術台ディテクティブ!

渦巻く陰謀。不透明な人事。黒幕は誰だ。俺に切らせろ。隣室の密談も聴診器できいちゃうぜ〜。医学部GUNJI教授が、諸手にメスの二刀流スタイルで大学総長へとのし上がる、一大ビルドゥングスロマン!サイもクラゲもメじゃないぜ〜

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例外における普通の人

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キャラクタ小説、正直、おにいちゃんがどうとか、妹がこうとかまったく分かりませんが、これはそういう小説ではありませんでした。「普通の人」ががんばるとどうなるのか、という実験です。シミュレーションです。

出てくる人はみな、強と弱に分けられます。強い人たちは闘っています。弱い人たちは闘っている気になっています。そんななかで分類しにくい人がいます。弱から見れば強、強から見れば普通の人。自身も普通を自覚しています。

大地震に遭遇し、校舎に閉じ込められた生徒たちは、何と闘っているのでしょう。強者は強者同士闘っています。弱者は強者や普通の人と闘っています。では、普通の人は何と闘っているのでしょう。

強者も弱者も大地震を手段と捉えています。前者は敵を討つための隠れみのとして、後者は日常から撤退するための盾として。普通の人だけが、大地震に抗おうとしています。つまり、普通の人は不条理と闘っているのです。

ここで言う強者とは村木と園部以外の人物、弱者は村木と園部、普通の人は鏡佐奈です。鏡那緒美と祁答院唯香は便宜上、強者に分類しておきます。

さて、

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奥様が先か、ネットが先か

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脳内イメージよりも先にイラストがあって、想像力に対する負荷が軽減されるということでこれはライトノベルなのでしょうか。

すみません今日の感想文は、いつもよりもさらに短いです。そして当然のようにネタバレです。

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寄ってたかって読者を騙す

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今まで見ぬふりをしてきた不明を恥じる。「未来を予知するカカシ」「ルールとしての殺人を許可された男」「嘘しか言わない画家」「太り過ぎて動けなくなった市場の女」「地面の音を聴く少女」などなどなど。これだけで、「自分には興味なし」「自分とは関係なし」と決めてしまう人もいるだろう。僕もそうだった。だが、覆された。興味津々関係ありあり、あなたも僕も明日にも、荻島に辿り着いているかも知れない。すべてはある必然の上に成り立っている。「異常者には異常者の論理」というのではない。きわめて通常の私が、風呂で涙を流すほどの必然と論理である。そして実は、主人公がいちばんおかしい。胸の谷間にライター挟んだバニーガールって、なんだ?

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悔やむという快楽

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いわゆる「『このミス』読み」。長編が出てるなんて知らなかった。しかも法月綸太郎ものですから、これを読まずに何を読むのか2004年です。

前衛彫刻家が娘をモデルに石膏直取り人体彫刻を製作した。彫刻家は癌でなくなり、遺作からは首だけが切り取られ持ち去られた。誰が、何のために。

「誰が」と書きましたが、力点は「何のために」の方にあります。いわゆるホワイダニットです。つまり動機です。

動機なんてふつうはわかりません。実は親子だった、恋人だった、トラウマだった、人間じゃなかった、などなど、読者には知らされていなかった事実があらわになり、なるほど、だから、やったのか、となるのが並のホワイダニットでしょう。そうでなければ、別の動機を右手にちらつかせておいて、左手の方でごそごそ、みたいな。

そこが本作の特異なところです。直球なんです。目をしっかり開いていれば見えるのです。冷静に推理すればわかるはずなのです。なぜ首は持ち去られたのか。犯人には、何が、必要だったのか。もちろん、言うまでもなく、私にはわかりませんでした。わかりませんでしたが、わかる人にはわかるのだろうということはわかりました。道具立てが万全だったからです。ヒントは冒頭から結末まで、至るところに配置されています。フェアです。そのフェアさ加減に悔しくなります。迂闊な人は悔やんでください。

悔やむといえば法月綸太郎。苦悩の探偵です。今回は「事件は防げたのではないか」ということを悔やみます。だけどちょっとあっさりしすぎの感も。仕方ないといえば仕方ないのかも知れませんが、昔みたいにもっとうじうじ悔やんでほしいところです。