Archive for the ミステリ Category

「ダメ王子」と「シンデレラ」

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「各氏絶賛」ということで帯買い、帯読みです。とりわけ、法月綸太郎氏の推薦文。

ダメ男の王子様と、戦うシンデレラ。

起死回生の逆転愛が待ち受ける必読の名作。

さすがとしか言いようがない。これが、作品に対する敬意と誠意ですよ。読書中、何らかの違和感を覚えたら、思い出してください、「ダメ王子」と「シンデレラ」。

私やっとわかりました。私がなぜいつも騙されるのか。フーダニットです。誰がやったのか、そこにばかり注目して足を取られる。いや、殺人事件なんだから、誰かがやってるのです。それは間違いないんだけれども、「ダメ王子」と「シンデレラ」。

そして私は第九章を二度読みました。序章を三度読んでからもう一度終章を読んで泣きました。

以下、ネタバレではなくネタズレなので追記にします。

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道具としての感情

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読んだことがない人などこの世には存在しない人気作家の直木賞受賞作。3年前の作品が再び脚光を浴び始めたのは、文庫化+映画化だからなのですね。原作ものの映画といえば気になるのはキャスティング。湯川役は佐野史郎確定として、石神とか草薙とかは誰がやるのでしょうか。誰でもいいような気がします。というのは地味。地味すぎる。

元ホステスで現弁当屋店員の女とその娘、彼女らの隣人であり女に思いを寄せる高校教師。犯人なんですよ。この三人が。これを地味といわずして、何を地味とすればよいのか、私にはわかりません。実際地味なんです。予想どおり地味なんです。でも、私は泣きました。純愛とか数学とかとは無関係に泣きました。そして、断言できます。映画では泣けません。これはもう絶対に、活字でしか揺さぶられない。以下、ネタバレですが、内容には一切触れられませんし短いです。

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これだから古典は怖い

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ノックスの十戒に足りないと私が思うのは「犯人は小賢しく」という項目です。これは「現代版」十戒という意味ではなく、あくまでも当時のノックスに、自らの十戒に加えてほしい。十一になるのは困るということであれば、「中国人禁止」か「ワトソンちょっと馬鹿」の項目を削ればいいでしょう。

という前置きを置いといて、あぁもうびっくりしましたよ。これ、他の作家が書いてたら間違いなく代表作ですよ。完全に油断したし、よもやこれほどまでに全力でフーダニットだとは、予想だにしなかった。そう、予想だにしなかった。

16年前の画家毒殺事件。犯人は妻。有罪判決懲役刑。そして、妻獄中死。なんだけども、妻は娘に「私は犯人ではない」という遺書を残していた。娘からの依頼を受け、ポアロ登場。

大昔の解決済み事件なので、手掛かりは関係者たちの「信用できない」証言しかありません。無理。その時点で無理。そしてご丁寧にも、その関係者たちに「信用できない」手記まで提出させるのです。カロリンに好意的な人も敵意的な人もみんながみんな、カロリンがやったと思ってるのですよ。

ここからネタバレですので、まだの人は絶対に読まないでください。人生の大いなる損失ですので。本当はもう、こうやって感想書いて公開していること自体がネタバレになっちゃうんですよねミステリは。

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リア充のリア充による

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非リア充のための青春ミステリ。

アマゾンの「商品の説明」(ノベルス版上巻)にはこう書かれています。

出版社/著者からの内容紹介
「あの頃の純粋な気持ちとさわやかな感動を胸に届けてくれました」withモデル森 絵里香
第31回メフィスト賞受賞!感動の長編傑作!
ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友(クラスメート)の名前が思い出せない。死んだのは誰!?誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作

これがすでにミスリード。偽装です。

「誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた」。リアルかも知れん。切ないかも知れん。でも、「誰もが過ぎる青春という一時代」を描いてはいない。描いてはいないがゆえに、謎は魅力的なのである。

リア充の中で一体誰が死んでいるのか、換言すれば、作者である「辻村深月」氏(「辻」の「辶」は点二つ)に殺されてしまったのか、という屈折した興味は、非リア充にしか持ちえないものだろう。そもそもリア充がリア充とか非リアとかを問題にすることはない。

この動機面での謎が推進力となって小説は進む。リア充にはわかるまいて。

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イニシエーションとしてのラブ・ストーリー

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これはこわい。

帯に書いてあるくらいだからネタバレではないと信じますが、絶対に二回読みたくなります。「二回読みたくなる」という評を目にして、「二回読むもんか」といけず視点で読んだ私がいうのだから間違いありません。確かにこの手のトリックはミステリにおいては先例があるでしょう。だがしかし、あまりにも巧みです。

もし仮に、二回読まずに済ませられる人がいるとしたら、それは次のいずれにも合致するでしょう。

  1. 読みはじめる前にトリックが完全にわかってしまった人
  2. 女の人

男には無理ですね。それはたぶんこの小説の語り手が男性一人称であることと関係があるように思われます。そしてたぶん、同じような小説を再び読んだとして、男はまた同じように騙されるでしょう。忘れるからです。「○○○とはそういうものだ」という事実を忘れてしまうからなのです。

恋愛ホラー小説というジャンルがあるのなら、それです。恋愛ホラーミステリです。ジャンル名並べると安っぽいですが、それは80年代の空気にも通じるのかも知れません。ホラーとして成立しうる空気というのがあると私は思います。現代にそれが成立するのかは、残念ながらわかりません。

もしかすると、私が「こわい」と思ったのは、恋愛小説をまったく読んだことがなかったからかも。ロミオとジュリエットぐらいしか読んだことありません。ミステリよりも恋愛に疎い人がむしろ衝撃を受けるのかも。

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人間が描けてない

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正直なところ前二作(偽書、基礎論)は憶えてない。憶えているのはアンチミステリということ。それだけで読みました。そして感想を書きました。ネタバレです。本書『ウロボロスの純正音律』(以下『純正音律』)を読んだ方にはご納得いただけると思いますが、以下の感想文においては『純正音律』以外の作品(竹本健治の作品ではないです)についてもネタバレしてますので、『純正音律』読んでないけどもうどうせ読むこともないだろうし、ネタバレしても構わないよ、とお考えの方はご注意下さい。思わぬネタバレがあります。『純正音律』お読みになった方は、それ以上のネタバレはありませんのでご安心を。

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犯人はオレだ!

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倒叙ものを読むとどうにも気分が沈みます。犯人の身勝手な独白に嫌気がさし、それでいて真相が発覚しそうになるとハラハラする。どう転んでも嬉しくないのです。犯人、探偵、誰に肩入れして読めばいいのかわからない。さて。

倒叙ものというのは、最初から犯人がわかっているミステリです。犯人が分かっていて一体何がおもしろいのか。

本書においてはまず被害者が亡くなるシーンから始まります。そして、視点が犯人にスイッチし、犯行に至る動機、準備、実行、後始末が描かれます。

犯人はどこでしくじったのか?警察はどうやって追いつめるのか?犯人の心理状態は?駆け引きは?特別な視点を導入することにより、通常のミステリでは描写しきれないものを描写する、それが倒叙ものの醍醐味です。そしてそれが倒叙もののすべてだと、私は思っていたのです。

ここからは完全にネタバレです。いつものネタバレよりもさらに容赦なく最上級のネタバレです。これから本書を読もうと思っている方は言わずもがな、読んでないけどこれからも読む予定はない、という方もこのエントリの続きは読まないでください。本書を読んだことがある方だけ先にお進みください。

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腕がぷるぷるした

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今回の話は「話が違う」ということについて何となく、薄々ぼんやり気づいたのはやはり図をかいてみたからなのでしょうか。だとするなら、そんな小賢しいことはせずに混沌とんと読み進める方法も捨てがたいようにも思われますがまぁそれは置いといて。

大きな絵を描こうとすると失敗するというのはこのシリーズでは常軌です。私が好きな『魍魎の匣』においては、「匣」に象徴される個人的な欲望、小さ(いながらも異常)な体験からなる妄念が重要な役割を果たしたのでした。動機は小さい方がいい。犯人にとっては決して小さくはないんだけども、主に読者の目からなる全的な視点から見れば、小さい。小さいがゆえに驚かされたりもするわけです。そしてその小さいのがカシャーンカシャーンと音を立てて嵌り込んでいく。何とも小気味いい場面です。

というところが、今回おもしろかったという感想。読んだ人はみんな共感してくれるはず。

ここからは、どちらかというとおもしろくない。おもしろくないのに目を逸らすことができない。

大鷹というキャラクタです。こういう人物をしっかり書くというのが力量なのだと思いますが、ミステリにおいては必ずしも求められることではない。なんとも贅沢な話です。

阿呆ではないけど空気が読めない。頭は悪くないのにとんちんかんな発言や行動を繰り返して、相手を唖然とさせる。意識を表層しか活用しないからです。こういう人は現実にもいますよね。学校や職場といった世間に、確実に一人はいます。いつでもどこでも一人はいます。なのに誰もが自分は大鷹ではないと思っている。もちろん私も思っています。私は大鷹ではありません。

のだけれども。

人は常に合理的な判断を行うわけではない。合理で動いたつもりが、何の理にも合ってなかったということは、現実においても多々ありまして、そのようなことをミステリで書くのには、必要以上の説明が必要となってくるでしょう。大鷹の人となりについて、また、思考回路の働きについてくどいくらいに描写されていたのは、作者の配慮なのでしょう。大鷹も大鷹自身の合理で生きているのだということです。

ただ、世界はおろか自分自身の理にすらかなわず、もうただただ疲労していたとか怠慢であったとか色んな事が重なって何も考えられなかったとか、そういう言い訳しかできないことがあります。比較的自覚的な大鷹と言える状況かも知れません。しかしそれは自覚的であるがゆえに非合理です。大鷹部分を否定せんがために、個性の統一に齟齬が生じるからです。そんな種類の非合理を、ミステリというルールで書く事は可能なのでしょうか。すでにミステリじゃないのかな。変な人が変だったり変じゃなかったりするような、やっぱり変。

あとこれは余談ですが、関口が妙にまともでしたよね。関口に感情移入している身としては調子が狂う。

さらに余談を重ねますが、青木と郷嶋が対決するシーンで泣いた。通勤電車で人目を憚りながら泣いた。あのシーンで感情を揺すぶられるのはわりとわかりやすいと思うのだが、泣くという表出の仕方は間違っているだろう。もう少し身体をコントロールできるようになりたい。

われは探偵

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古典とは発見であり再発見であるところの新発見である。

すみません。今回もそれです。SFとミステリの華麗なる融合などという売り文句に、すっかり騙られました。そんな中途半端なものではありません。これはまったく新しいミステリです。いうなればロボットミステリです。ロボットミステリとSFミステリとは何が違うのか。SFミステリとはSFチックな設定で展開するミステリです。では、ロボットミステリとは? その答えは残念ながらネタバレです。

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KAMISAMA enjoys the game

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※注)本投稿の投稿者は私店員Kですが、内容については店主の解釈によるものです。私自身はありふれた感想しか抱きませんでした。正直、その発想はなかったわ。

「神様ゲーム」のGoogle検索結果からもわかるように、すでに数多くのレビューがあり、2006年版「このミス」5位ということもあって、議論し尽くされている感のある本作ですが、違う。違います。誰もが本作品の著者が麻耶雄嵩であるという事実を忘れているかのようです。主たる議論の対象となっているのはあれかこれかの二択ですが、違います。それは問題を見誤っています。

また、本作が講談社の「ミステリーランド」という子ども向けの体裁を取ったシリーズに収められていることから、「子どもに読ませられるか」ということが論点になりがちですが、それもミスリードです。麻耶雄嵩が子ども向けでないことは初めからわかっているはず。なのになぜあえて「子ども向け」なのか。そこを注意深く検証することによっても、正しい読みが導かれます。

それからタイトル。「神様ゲーム」。ゲームをするのは誰か、ということです。

以下ネタバレです。

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