Archive for the 読書部 Category

リア充のリア充による

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非リア充のための青春ミステリ。

アマゾンの「商品の説明」(ノベルス版上巻)にはこう書かれています。

出版社/著者からの内容紹介
「あの頃の純粋な気持ちとさわやかな感動を胸に届けてくれました」withモデル森 絵里香
第31回メフィスト賞受賞!感動の長編傑作!
ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友(クラスメート)の名前が思い出せない。死んだのは誰!?誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作

これがすでにミスリード。偽装です。

「誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた」。リアルかも知れん。切ないかも知れん。でも、「誰もが過ぎる青春という一時代」を描いてはいない。描いてはいないがゆえに、謎は魅力的なのである。

リア充の中で一体誰が死んでいるのか、換言すれば、作者である「辻村深月」氏(「辻」の「辶」は点二つ)に殺されてしまったのか、という屈折した興味は、非リア充にしか持ちえないものだろう。そもそもリア充がリア充とか非リアとかを問題にすることはない。

この動機面での謎が推進力となって小説は進む。リア充にはわかるまいて。

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旬のものかと思いきや

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時事的な読み物と思っていたので図書館から借りるつもりだったのですが、購入して正解でした。
アメリカの成り立ちについてよく分かっていない私には、基礎的なテキストとして手元に置き続けたい1冊です。

盛り込まれた内容からすれば非常にコンパクトに、明解にまとまり、与太話は殆ど無く、おそろしく割安だと思います。
いかにも賞味期限が短かそうな気配のするタイトルと装幀が惜しい。これはちょっとあんまりです。

イチロー(たぶん)かく語りき

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あぁもちろん党首のほうです。以下「世界」論文要約です。なんだかアマゾンユーズドで値がついてますが、先週の金曜日、アバンティブックセンターには普通に積んでありました。100冊くらいありました。

なんでテロ特措法はダメか。なんでOEFじゃなくてISAFなのかというと、OEFが米軍活動であるのに対し、ISAFは国連活動だから。

テロ特措法による海自の活動は米国の自衛権発動を支援するものであり、日本にとってはすなわち集団的自衛権の発動に他ならない。だからダメ。憲法的にダメ。

第一、「安全だから」「安上がりだから」という理由で続けられる「国際貢献」にどれほどの価値があるのか。アメリカ様のご機嫌を取る以上の利があるのか。そろそろそういう不名誉な地位から脱却すべきではないか。

ISAFは国連の活動。つまり国際社会の秩序と平和を守るための活動である。「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と謳う憲法の理念に合致する。

だからといって、国連の言うことにすべて従うというわけではない。私が言いたいのは、国連決議で認められた平和活動に参加することは、憲法には抵触しないということである。参加するかしないかはその時の政府が決めること。国連が認めない活動には参加しない。国連が認める活動には参加することができる。

日米同盟を蔑ろにするつもりはない。日米同盟と国連中心主義は矛盾しない。相手の言いなりになるのが同盟関係ではない(ジャイアンとスネ夫の関係を同盟と呼べるか)。日本がアメリカの同盟国なのであれば、嫌われ、孤立していくアメリカに忠告すべきなのである。一緒になってみんなから嫌われてどうするの。

というわけでISAF参加しますよ。政権取ったら行きますよ。「普通の国」なら当然でしょ。憲法だって理念的にも9条的にもまったく問題ないしね(どこぞのお馬鹿さんのせいで改正も遠のいたし…)。武器使用? そういうのは世界の常識に従えばいいんだよ。

安倍長期政権樹立のために

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これはひどい。

ひと言に尽きてしまいそうになりますが、こらえて感想書きます。日本という「先進国」の、官邸という「政治の中枢」で、これはないわ。愛国者や右翼の人は読まないでください。読むのならフィクションだと思ってください。安倍支持者の方には読んでいただきたい。やっぱり安倍さんのせいじゃないんだ、ってことがわかります。私はハハハハと湿った笑いを漏れ流しながら読みました。本当におもしろいです。フィクションとしてなら。よその国の出来事なら。まぁ苦情はたれるが権利は享受、国家にフリーライドする無責任な日本人なら存分に楽しめるでしょう。えぇえぇ私のことです。

さきほども書きましたが、安倍氏は実はそんなに悪くないです。ただただ思想がなくて判断力がなくて気が小さいだけ。功名心だけは人一倍ありますが、政治家なら誰でもそうでしょう? 問題は彼の周囲にあります。すなわち安倍さんチームの面々です。その惨状たるや筆舌に尽くしがたい。ちょっとこれはありえない。安倍さんあまりにもかわいそう。

安倍氏の至上命題は「長期政権」なのだそうです。とにかく長くやりたい。だから何があっても辞める気はないのだと。

では、そのためにできること。小泉政権をお手本に。

側近。井上秘書官がひどすぎます。この人がここにいる理由が見つかりません。前政権が長期に渡ったのは飯島秘書官のおかげです。真紀子にクビを言い渡したのも飯島秘書官なんです。なりふりかまわず、飯島氏を呼び戻しましょう。小心ゆえに出来ないことは、飯島氏に全部やってもらいましょう。

敵。絞りましょう。なんでもかんでもケンカ売ればいいってもんじゃないです。小泉氏ですら相手にしたのは郵政官僚だけです。総務省内でも郵政だけなんです。霞が関全体を敵に回すのはあまりに無謀です。官僚はうまく使いましょう。ってのはさんざん尻拭いしてもらってるから分かってるか。使い方が下手なだけで。

ルサンチマン。秘書官と仮想敵を上手に選べばもう安心ですが、政治的な思想のない安倍氏が自己実現の欲求だけで長期間首相を続けるのは難しいと思います。ルサンチマンを抱きましょう。マスコミなんかどうでしょう。朝日ムカツクブッツブス、とかね。ナベツネ風情がうぜえんだよ。とかね。訴訟とか世故いことやってないで、首相権限をフル活用して完膚なきまでに叩きのめしましょう。ただ、マスコミにもちゃんと味方がいることだけは覚えていてほしい。産経とか産経とか産経とか。

能力的には安倍氏も小泉氏も大差ありません。違うのは上の三点くらいです。パフォーマンスの気持ち悪さはどっこいどっこいですしね。出れば出るほど不人気になるのであれば、テレビなんて出なきゃいいんですよ。

以下、完全に余談です。官邸崩壊のA級戦犯三人について。

世耕弘成元広報担当補佐官。郵政選挙の成功は結局のところ、元々人気のあった商品が妥当に売れたに過ぎない、ということなのでしょうか。成功体験をつづった自画自賛本を2冊出版しておられるそうですが、3冊目は今回の失敗から学んだことを書かれれば、今後の自民広報戦略に大いに資するでしょう。帯の売り文句は「とても『美しい国』なんていえませんでした(笑)」でひとつ。

塩崎恭久元官房長官。政界再編の暁にはリベラルの旗手としてご活躍願いたいです。あと、期待したいのは小池百合子氏対策ですね。権力に媚びる小池氏の出るとこ出るとこ首突っ込んで、「あなたのカウンターパートは、私だ」で、日本の国益を死守してほしいです。

井上義行元首席秘書官(ん?いまもだっけ?)。安倍晋三ファンクラブ会長としてアイドル安倍ちゃんを影から支えてほしいです。安倍ちゃんがいい人で、思いやりがあって、そしてすごくいい人であることをとにかくアピール。見えないところでアピール。間違っても表に出てきちゃダメ。なんで来賓の席に座ってるんだ。

実際のところ次が麻生氏ってのは、よっぽど枯渇してるってことでしょうね自民党は。二大政党やるんなら民主も含めて政界再編した方がいいんじゃなかろうか。自民の支持基盤なんて小泉氏が手を突っ込むまでもなく、とっくに壊れてるって話ですしね。

一家に一冊

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諸々の事情により法令文とのつきあいが始まりました。
法律文自体は政府系のサイトで気前よく公開されているのですが、これがまた。やたらめったら息の長い係り受けもさることながら、それ以前に用語がさっぱり分からない。
「自然人」とはギャグなのだろうかと本気で思ったほど分からない。

この歳になるまでコンパクト六法すら手に取ったことがなかったツケがまわってきたということでしょうか。
分からんものはしかたないので、まずは基礎の基礎からということで。
誕生日に本書を買い与えてくれた相方のチョイスは非常に的確でした。

私が高校で0.5ミリのずれに心血を注いでいた間、商業科の友人はこんなややこしいこと(→手形法等)を習得していたのか、とか、
大学でカントもフーコーもヴィトゲンシュタインもカバーするけどホッブスにはかすりもしない学部に居た間、法学部ではこんなアクロバティックな文章作法(→及び又は若しくはの使い分け等)を習っていたのか、とか。
世の中には本当に様々な種類のいけずな(こまかい)業界があるものです。

寝転がって読めるような豆知識も豊富に収録され、お買い得だと思います。
唯一の難点は重いことでしょうか。
この1ヶ月間にわたる通読で、二の腕にいくらか筋肉がつきました。広辞苑よりは軽いですが新解さん2冊分くらいはありそうです。

イニシエーションとしてのラブ・ストーリー

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これはこわい。

帯に書いてあるくらいだからネタバレではないと信じますが、絶対に二回読みたくなります。「二回読みたくなる」という評を目にして、「二回読むもんか」といけず視点で読んだ私がいうのだから間違いありません。確かにこの手のトリックはミステリにおいては先例があるでしょう。だがしかし、あまりにも巧みです。

もし仮に、二回読まずに済ませられる人がいるとしたら、それは次のいずれにも合致するでしょう。

  1. 読みはじめる前にトリックが完全にわかってしまった人
  2. 女の人

男には無理ですね。それはたぶんこの小説の語り手が男性一人称であることと関係があるように思われます。そしてたぶん、同じような小説を再び読んだとして、男はまた同じように騙されるでしょう。忘れるからです。「○○○とはそういうものだ」という事実を忘れてしまうからなのです。

恋愛ホラー小説というジャンルがあるのなら、それです。恋愛ホラーミステリです。ジャンル名並べると安っぽいですが、それは80年代の空気にも通じるのかも知れません。ホラーとして成立しうる空気というのがあると私は思います。現代にそれが成立するのかは、残念ながらわかりません。

もしかすると、私が「こわい」と思ったのは、恋愛小説をまったく読んだことがなかったからかも。ロミオとジュリエットぐらいしか読んだことありません。ミステリよりも恋愛に疎い人がむしろ衝撃を受けるのかも。

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アメリカがジャイアンなら

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ジャイアンとは、わがままという名のローカルルールを全世界に適用しようとする人のことです。その手段は暴力です。

やりたい放題やられてるなぁというのは漠然と思っていたことなのです。アメリカはジャイアンだ、そう喩える人はたくさんいるようです(→参考)。

しかし、その事実をアメリカが隠そうとはしていない、むしろ日本の方が気づかないふりをしているという有り様には、ただただ驚かされるばかりです。本書の慧眼は「知らなければよかった」というような類いのものではありません。日本人は「知り」、「知らなかったという事実」に屈辱を覚えるべきなのです。公文書に明記されているのだそうですよ。己の不勉強を棚上げして叫びますが、マスコミは何やってんだ。「建築基準法は阪神大震災が契機となって改正された」。信じるも信じないも、疑うべき理由がありませんでしたよ。

アメリカがジャイアンだとすれば、以前の日本はスネ夫でした。建築基準法だけではありません。郵政の民営化も、「国際」会計基準の導入も、司法制度の改革も、ジャイアンとスネ夫の関係においてはっきり読み取れるのです。そうです。思い出されるのはあの名言です。

スネ夫の物はおれの物、おれの物もおれの物。

現首相はさすがに恥ずかしくなったのか、アメリカから距離をとるようなポーズを見せています。そしたらさっそく、アメリカから副大統領がすっ飛んでくるわけです。アメリカがジャイアンだとすれば、いまの日本はのび太でしょう。はい、もう言わなくてもわかりますね。あえて言いますけどね。

のび太のくせになまいきだぞ!

ドラえも〜ん。何か出してよ〜〜。

で、この世界にドラえもんは存在するのかという話になる訳ですが、アメリカ以上のマッチョ登場って事態は可能ならば避けたいですね。かあちゃんどこにいるんだろうなぁ。日本はいっぱい勉強して、出木杉になればいいのだと思う。

うれしがり

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何が好きってペレックの、こんな種類のうれしがりだ。傍から見て微笑ましい、というよりは、おおお、お前もか、といった種類の。20世紀フランスの大作家を捕まえて、「お前もか」もないのですが、この気持ちは誰もが容易に理解しうるものでしょう。

ヘルマン・ラフケという醸造業で成功した美術愛好家に関する話。《美術愛好家の陳列室》というのはラフケが、ドイツ系アメリカ人画家ハインリッヒ・キュルツに描かせた絵で、ラフケのコレクションを収めたギャラリーが描かれています。ラフケの集めたヨーロッパの名画やアメリカの新興画など、百を越える絵画が、一定の割合で縮小され細密に再現されているのですが、それだけではない。この絵はこの絵自身をも含んでいる。つまり、《美術愛好家の陳列室》には《美術愛好家の陳列室》も描かれているのです。当然その画中画には百を越えるラフケコレクションが描き込まれていて、そこにもまた《美術愛好家の陳列室》が…。

ヘルマン・ラフケが亡くなった時に、この入れ子構造は完成します。遺書の細かい指示どおりに、ラフケの遺体は剥製にされ、キュルツの絵と同じガウンを着せられ、同じポーズでひじ掛け椅子に座らされます。そして、遺体は地下室へ。その地下室にはもちろん《美術愛好家の陳列室》とそこに描かれているラフケ・コレクションが絵と同じように陳列されているわけです。そのまま地下室は封鎖され、《美術愛好家の陳列室》は閉じられます。

と、ここで終わってもいいのです。ここで終わらないのがペレックです。いや、むしろ、ここから始まるのがジョルジュ・ペレックなのです。

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人間が描けてない

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正直なところ前二作(偽書、基礎論)は憶えてない。憶えているのはアンチミステリということ。それだけで読みました。そして感想を書きました。ネタバレです。本書『ウロボロスの純正音律』(以下『純正音律』)を読んだ方にはご納得いただけると思いますが、以下の感想文においては『純正音律』以外の作品(竹本健治の作品ではないです)についてもネタバレしてますので、『純正音律』読んでないけどもうどうせ読むこともないだろうし、ネタバレしても構わないよ、とお考えの方はご注意下さい。思わぬネタバレがあります。『純正音律』お読みになった方は、それ以上のネタバレはありませんのでご安心を。

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人はどう変わるかわからない

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賭博や宗教や運動(スポーツではなく)に走ったら2秒で見捨てる、と連れあいに明言している身としては、本書いちばんの山場は、50歳にさしかかったアーサーが、おのれのオカルトへの傾斜を後妻候補に滔々と語りだす場面です。
ジョージの冤罪裁判よりもハラハラしました。

それはともかく、(部分しか)読まずに書かれた書評というのはそれほど珍しくもない、とは昔どこかで読んだおぼえがありますが、あらすじ紹介でも同様のことが有り得るのでしょうか。
しかしこの疑惑については、私の英語読解力が至らないために見当違いをしている可能性も大きいので、ゆっくり再読してみます。